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2011年06月09日

GIAHSによせて

6月9日

世界農業遺産(GIAHS)に,佐渡と能登の里山里海が登録されるということで,報道発表がありました.これってなんなの,世界遺産と違うの,すごいことなの?という疑問をお持ちの方が多いかと思います.私も同様なので少し調べて見ました.

GIAHS(Globally Important Agricultural Heritage Systems)は世界農業重要遺産システムと訳されています.
1.国連の機関FAO(国連食糧農業機関 Food and Agriculture Organization of the United Nations)が2002年から主として途上国向けに始めたプロジェクト
2.世界的に重要な農法や生物多様性などを有する地域を未来に継承することを目的とした制度( みどりネットHPより改変)とされています.

石川県には国連大学高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニットがあります.今回の申請に至るまでに,石川県と国連はすでにそういう繋がりがあったわけですね.申請に至るまでは比較的スムーズだったのかもしれません.
同じようなものに世界遺産があります.こちらはユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が認証するもので,どちらも国連のお仕事なのですね.

FAO公式HPでは「GIAHSイニシアティブは以下のような動的な保護アプローチを促進するものである」と4つ上げてあります.

1.食料安全保障と人間の福利を確保しながら、農民がこれまでに築いたシステムと生物多様性を育み、適応させる.
2.生物多様性と伝統的な知識をもとの場所で保護するのと同時に、保護的な政府政策やインセンティブを支援する.
3.食料への権利、文化的な多様性、地元コミュニティーや土着の人々の成果を認識する.
4.天然資源の管理のため、遺伝資源をもとの場所で保護するという考え方に、関連する伝統知識や地元の慣例を統合していくというアプローチが必要であることを明確にする。これは、物理的変化また社会・経済環境の変化に対し、継続的に適応していくための方法として、農業システムの社会・環境的な復元力及び共進化バランスを強化することによって行われる.

上記の1,2,3については私たちがこれまで続けてきた活動とほぼ同じことをいっています.4についてはちょっとよく判りませんのでおいておきましょう.

特に2の「生物多様性と伝統的な知識をもとの場所で保護するのと同時に、保護的な政府政策やインセンティブを支援する」の部分が重要な項目ではないでしょうか.
能登を含め日本の農村=里山は,過疎高齢化,農業の不振によって荒廃が進み,そこにあった固有の生態系,生物多様性が損なわれてきている.という現状があります.この現状をどうやって変えていくのか,地域の里山をどう維持していくのかという課題に対して,まだ十分な答えを得られていません.キーワードの一つとして,里山をいかにビジネスに繋げていくかという事が議論されています.

さて,今回GIAHSに申請中の佐渡と能登ですが,これまでにどのような取り組みが行われてきたでしょうか.
佐渡市は,トキが日本で最後まで生息していた土地であり,トキを象徴に地域を維持していこうという取り組みが始まっています.2008年のトキの放鳥と合わせて「朱鷺と暮らす郷米」の認証制度をつくりました.トキが餌をついばめる田んぼづくりを島内ですすめています.普通より高いお米ですが,トキの保全に賛同してくれるお客さんが買ってくださり,佐渡の農家がそれでやっていけるようになれば,佐渡の農業,地域そして生態系が持続的に維持されていくという考えです.
世界的に重要な農業遺産を維持するために,国民が負担するという見方もできます.しかしそれは選択できる負担です.

一方,能登はどうでしょう.能登の千枚田の景観が象徴として良くあげられていますが,このような棚田や谷内田(山あいのちいさな田んぼ)はどんどん失われていっています.そこには日本固有の里山の生物が多数存在していますが,これらも徐々に姿を消していっています.これらもGIAHSが謳う重要な農業景観の一つだと思いますが,その保全については十分な対策は打たれていないのが現状です.

GIAHS関連でwebを検索して見ると,羽咋市では自然農法として,農薬,化学肥料,除草剤を使わない農業が一部で行われているそうです. 羽咋の自然農法

少しツッコミをいれるとすれば,これは最近流行りの安心安全を売りにする農業の一つですが,比較的新しい手法の導入であり,GIAHSが掲げる「世界的に重要な農法」と言えるのか疑問に感じます(確かに昔は農薬も化学肥料もなかったと思いますが自然農法という手法は新しいものです).また,自然農法を実施することで地域の生物多様性が維持されているという裏付けもないままですので,これから調査が必要です.

能登では塩づくりのための薪や製炭業による里山のバイオマス利用が,長年里山の景観を維持してきたと考えられていますが,現在は放棄されキクイムシなどの発生も問題になっています.能登地域の里山のバイオマス利用もこれからの課題です.

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NPO法人生物多様性農業支援センター理事長,原耕造さんのブログにGIAHS登録から今後の方向性について分かりやすく説明があります.

「GIAHS登録とは一般の世界遺産登録とは異なり、地域政策の課題と地球環境の課題を一体的に解決するシステムそのものである」
「(佐渡の)島民が自分の問題としてこれらの課題を捉え様々な業種の人たちと連携し自らが課題解決へ参加する、絶好の機会を与えてくれた。」

GIAHSの指定は,世界に誇る貴重な農業景観,農業生態系をもった地域が,現在抱えている課題を自分たちの手で解決していくための指定である,と考えれば良いのではないでしょうか.私たちNPO法人の名称「おらっちゃの里山里海」はまさにそのことを意味しています.

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今回,七尾市など4市4町で,棚田や浜辺での営みなどを組み込んだ「里山里海」を申請した能登地域ですが,もし認証されても,よかったねと喜んでばかり入られません.世界的に重要な農業資産を地域で維持していく義務を負ったことになります.
里山里海の持続的な利用を進めるという大きな責任を背負い,能登地域は新しい段階に入っていきます.どのような方向に進んでいくのでしょうか.より良い未来に向かってすすんでいけるように,私たちも努力していきたいと思います.

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投稿者 赤石大輔 : 2011年06月09日 18:59

この記事へのコメント

輪島の山奥にある私の村には、
美味しいお米の穫れるとても大きな棚田と
小さくうつくしい、いくつかの棚田がありますが、
耕作放棄が増えています。
いろんな生物もいて、
助け合いの共同体のなごりもありますが、
5年後には、廃村になるだろうと輪島市に推定されています。

でも、未来のこと(肥料の輸入ストップ・気候変動・中国の人口増加など)を考えると、
農地は、大事に保全したほうがいいように思うのです。
どうしたらいいのか、毎日、考えています。
佐渡のように、トキの舞う田んぼ米として、
低農薬の安心ブランドとして、行政の支援をうけて、
高く売ることができれば、廃村にならなくていいのかな???

投稿者 びしゃごあきこ : 2011年06月10日 20:09

びしゃごさんのお宅にもぜひ伺いたいです.
立派な杉があるとか.
美味しいお米と輪島の美しい風景を守るため,地域の農業を維持する方法を考えたいですね.お友達をたくさん増やして,お米を一緒に作ったり買ってもらうのも一つかと思います.

投稿者 akaishi : 2011年06月11日 09:07

ありがとうございます。
またよろしくお願いいたします。

投稿者 びしゃごあきこ : 2011年06月12日 07:49